京都~世界遺産「東寺」

世界遺産 真言宗総本山 教国護国寺 東寺
唯一残る平安京の遺構。

平安京に都を移した2年後の796年に、
都と国家の鎮護のために建てられた「官寺」(国立の寺院)

桓武天皇のあとに即位した嵯峨天皇は、
唐で新しい仏教、密教を学んで帰国した弘法大師空海に託した。

ここに、真言密教の根本道場東寺が誕生する。

*密教・・・
教本の教えを文字を読んで理解するのではなく、
手に印を結び、仏の言葉を唱え、護摩を焚くなど、
体験を通じて直観的に理解するものだとする仏教のこと。

弘法大師空海は、まず、密教の中心伽藍となる講堂の建立に着手した。
講堂建立の翌年、朝廷に願い出た記録から、
五重塔の工事も、この頃、はじまったといわれている。

鎌倉時代
源平合戦が起こり、羅城門は崩れ、衰退の一途をたどった東寺と西寺。

運慶が東寺の諸像の修復に着手。
1233年、運慶の子、仏師康勝により、弘法大師空海の坐像が完成。
後白河法皇の皇女・宣陽門院が財政の基盤をつくり、東寺は息を吹き返していく。

一方、西寺は、1233年に境内に唯一残っていた五重塔が焼失。
以後、西寺が復興することはなかった。

室町時代
「不開門」と呼ばれるようになった東大門。

東寺に陣を置き新田義貞と戦火を交えた足利尊氏が、
東大門を閉め危機を脱したことに由来する。

その後、いくつもの戦火をかいくぐり、応仁の乱の戦禍も免れることができた。

しかし、1486年に起こった文明の土一揆で金堂、講堂、廻廊南大門などを焼失。
東寺創建以来、もっとも大きな痛手を被った事件だった。

桃山時代
焼失した金堂が約100年ぶりに再建。
金堂、薬師如来、日光菩薩、月光菩薩も誕生し、南大門も完成。
焼失後、すぐに再建した講堂も含めて、東寺は、ほぼ元の姿になった。

江戸時代
落雷によって五重塔が焼失するが、1644年に再建。
徳川家康は、東寺の子院である観智院を、真言一宗の勧学院に定めた。

困窮が続いた時代もあったが、法要は続けられ、
僧をはじめ、多くの人々によって東寺は守られてきた。

現代
1965年秘仏公開。金堂、講堂の扉が開いた。

創建からおよそ、1200年。
1994年に世界遺産登録された。

東寺拝観時間は8:00~17:00(最終受付16:30)
駐車場600円(約2時間)
入館料800円(観智院との共通券)

境内は、三十三間堂の門の移築をした南大門を始め、
金堂講堂食堂が加藍まで一直線に並ぶ寺域全体も、
大きな曼荼羅に見立てられている。(地図はパンフより)

五重塔(国宝)
約55m。日本一の高さを誇る木造建築。

初層内部に安置する金剛界四仏は、塔の心柱を大日如来にみたて、
その外を宝生如来などの4体の仏像が鎮座する構造になっている。

弘法大師空海は、講堂の次に五重塔の大工事に着手した。

しかし、費用も人手も足りず、826年11月24日、
朝廷に材木運搬の協力を願い出ている。

五重塔は、落雷などにより4度焼失したが、そのたびに再建された。
現在の五重塔は、徳川家光の寄進によって1644年に再建した5代目。

五重塔の初層内部には、極彩色で彩られた密教空間が広がっている。
期間限定で内部が観覧できるが、この日はできなかった。

平安時代の威厳と格調を伝える「金堂」
796年に東寺が創建され、最初に工事がはじめられた。

1486年に焼失。
現在の建物は、1603年に再建された。

宋の様式を取り入れた天竺様和様を合わせた桃山時代の代表的な建物。
屋根の中央の切り上げは、東大寺大仏殿や平等院鳳凰堂にも見られる形。

小屋根の下にある両開きの扉は、
法会のときに開けられ、散華したともいわれている。

本尊は薬師如来
薬壺を持たない古い様式の仏像。
光背に七体の化仏を配する七仏薬師をあらわす。

台座の周囲には、如来を守り、如来の願いを成就する働きがある、
十二神将像が配されている。

本尊に対面して右側は日光菩薩。左側は月光菩薩
これら薬師三尊は、桃山時代の仏師、康正が手掛けた
奈良時代の様式のものといわれている。

講堂
825年に弘法大師により着工され、835年に完成。
当時は、講堂と金堂の周囲を廻廊が巡りふたつの大伽藍をつないでいた。

しかし1486年の土一揆で、金堂、南大門など共に焼失。
現在の講堂は、1491年に再建されたもの。

講堂の立体曼荼羅(重要文化財)
密教の教えを21体の仏像群で立体的に表現したもの。
16体が国宝、5体が重要文化財。(写真はパンフより)

「大日如来や菩薩が明王に姿をかえ、宇宙に遍満する」といった、
仏教の世界観を視覚的に表現している。

質素に表現されることが多い如来像だが、
宝冠や美しい装飾が施されている。

立体曼荼羅の配置図

五大明王の中心に鎮座する不動明王は、
命がけで人々を救済するという意味を現す諸刃の剣を手にもつ、密教独特の仏。

エキゾチックな顔立ちの帝釈天は、
インド古代神話の英雄・インドラがモデルで白象にまたがっている。

中央の五仏と五菩薩の中尊は後世の補作であるが、他の15体は創建当時のもの。

2000年に行われた修理の時、
須弥壇の下から、薄い木を焼いた跡が発見された。

基礎工事が終わり、須弥壇の基礎ができあがった時、
弘法大師空海が、鎮壇の意味で護摩を焚いたのではないか、ともいわれている。

櫛笥小路
食堂の北側にある北大門から北総門までの参道。
平安時代以来そのままの幅で残っている京都市内ただひとつの小路。
その小路の東側に建つのが、観智院。

勧智院
東寺一山の勧学院。
大学の研究室のようなところ。

1308年、後宇多法皇によって東寺に帰依され、1359年頃に杲宝が創建。
杲宝の弟子、賢宝は、本尊の五大虚空蔵菩薩を安置した。

虚空蔵とは、
「宇宙のような無限の智慧と慈悲の心が収まっている蔵」を意味し、

人々の願えを叶えるために蔵から取り出して、
智慧や記憶力、知識を与えてくれる、とされている。

五大虚空像は、その知恵を五つに表したもので、
息災増益の祈願のための本尊となっている。

この五大虚空像は、唐の都・長安の青龍寺金堂の本尊であったもので、
847年入唐僧恵運が請来したものである。

ここで杲宝や賢宝は、東寺に伝わる数多くの文書類を編纂。
集めた密教の聖教類は1万5千件以上あり、
量と質で、わが国最高の文化遺産となっている。

江戸時代、徳川家康は、黒印状をもって真言宗一宗の勧学院と定めた。

観智院は庭園のみ撮影が許されている。

枯山水 四方正面の庭(桃山時代)

観智院は、吉岡一門に勝った宮本武蔵が、
その残党の復讐から逃れるため、隠れていた場所として知られている。

武蔵が身を潜めていたと言われる客殿(写真はパンフより)

身を潜めていた武蔵が書いた「鷲の図」と「竹林の図」。
現在は国宝となっているこの客殿から「長者の庭」が見える。

涅槃禄ー長者の庭

2017年、東寺第256世長者砂原秀遍の代に、
真言宗立教開宗1200年慶讃大事業として新たに作庭された。

枯山水様式の庭は「涅槃禄」の庭と称し、白川砂利の広がりの中に隠岐島の赤松、杉苔、吉野石、森山石などを巧みに配し、真言密教の無限の宇宙観と涅槃寂静の境地を現している。

この庭は新しく作られたものだが、武蔵はどんな庭を見ていたのだろうか。

食堂(じきどう)
建立は、平安時代。
生活の中に修行を見いだす場所である。

平安時代から本尊だった千手観音菩薩と、菩薩を護る四天王は、
かつて旧国宝だったが、1930年の火災で大きく焼損。

千手観音菩薩は、修復後、宝物館に安置され、
食堂の本尊は、十一面観音菩薩となった。

十一面観音菩薩の周りには、かつて千手観音菩薩を護っていた時と同じように、
3mを越す持国天増長天広目天多聞天の四天王が守護している。

東寺に本陣を置いた足利尊氏は、この食堂に居住していたこともあった。

現在の建物は、1930年に焼失後、3年間の工事を経て完成。
堂内には納経所があり、多くの巡礼者の祈りの場になっている。

食堂は、四国八十八ヶ所巡礼や洛陽三十三所観音霊場などの納経所ともなっている。
毎月21日には、四国八十八ヶ所巡礼を再現した、お砂踏みも行われる。

今回いただいた2つの御朱印

御朱印は、9種類ある。
今回は、弘法大師と薬師如来にしてみた。

寺域全体も、大きな曼荼羅に見立てられている東寺。

弘法大師空海は、密教の主尊である「大日如来」を境内の中心にすえ、
広大な寺域に曼荼羅を表現しようとしたのだろうか。

造営にあたり、弘法大師空海は、御影堂の場所に住房を構えた。
御影堂では、いまも毎日、弘法大師空海がいらしたときと同じように、
一の膳、二の膳、お茶をお出ししている。

おまけ
帰りにサクッとランチは京都高島屋の「恵亭」で。
左:ロースかつ、右:ヒレかつ
 
キャベツはおかわりの際、以前のような客前で盛り付けるタイプではなく、
小鉢に入ったキャベツを渡す形式になっていた。

おかわり自由の漬物は、1人用2種類になっていた。
以前は4種類だったのにね…”(-“”-)”

*東寺の説明は、ホームページを参考にしています。
東寺 – 世界遺産 真言宗総本山 教王護国寺 (toji.or.jp)

京都~世界遺産「東寺」” への17件のフィードバック

  1. 長文、お疲れ様でした〜。
    とても読み応えのある記事でした。
    知らないことも多かったです。
    ありがとうございます(^-^)

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    1. KYOさん、こんにちは(^^♪
      がんばりました(*^^)v
      最初はもっと長かったんですが、だいぶ短くしました(^-^;
      読んでくださってありがとうございます(^_-)-☆

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      1. え?勿体ない!
        と、思ったのは私だけではないと思いますよー。
        明日からチームラボが東寺でやるイベントも楽しみですね(^-^)

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      2. そう仰っていただき、ありがとうございます(#^^#)

        チームラボの東寺イベントのホームページ見ました!!
        とっても幻想的で綺麗だったので、実際に見ると圧巻でしょうね~。
        行けたら行ってみたいです(*^^)v

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  2. 年代ごとに詳しい説明があって初めて知る事がいっぱいでした(^^)/国立と言うところが凄いです。大変な作業なのに焼失~再建の繰り返しには執念を感じました。この資料を頭に詰め込んで改めて訪問します。有難うございました(*^_^*)

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    1. wakasahs15thさん、こんにちは(^^♪
      東寺には歴史があって、年代別に書いてみました(*^^)v
      何度も被害にあってもその度に再建する…、当時の人々がいかに大事に思ってたかが分かりました。
      長文、読んでくださってありがとうございます(^_-)-☆

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  3. 東寺いいな( ^^) _U~~ 弘法大師空海は昔彼の書を見てからものすごく心打たれて最も尊敬する方となりました♪
    ・・って誰でも尊敬してるよね”(-“”-)”

    立体曼荼羅は神秘的よね(-。-)y-゜゜゜

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    1. astro26さん、こんにちは(^^♪
      東寺、外から見ることはあったのですが、今回、初めて行きました(^^)/
      書を見たとはすごい体験。
      大尊敬になりますね(^_-)-☆

      はい、立体曼荼羅は面白い!!って思いました(*^^)v

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  4. こんばんは
    東寺の詳しい説明を^^
    私達は、桜の頃夕方から夜桜を観てきました
    夜だったのでこの様にじっくり見れませんでしたから
    改めてここで見せて頂きました^^
    tabisurueiyoushさんは、御朱印を頂いているんでしたね^^

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    1. makoさん、こんにちは(^^♪
      自分の調べ学習?みたいな感じで書いちゃいました(^_-)-☆

      夜桜!!
      綺麗だったでしょうね~🌸
      御朱印は、一昨年から頂き始めました。
      段々増えていくのが楽しくなります(*^^)v

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  5. こんにちは(^^)
    東寺の歴史の説明詳しいですね! 2015年に友人の民謡の発表会が京都テレサホールであった時に東寺も訪ねてたので記事を懐かしく見させてもらいました。新幹線から見える五重塔の存在感には通る度に圧倒されてます。また何時か季節を変えて訪ねてみたい東寺です。
    私が訪ねた時の記事、良かったら見てください。
    https://shinmei1952.wordpress.com/2015/11/01/

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    1. saganhamaさん、こんにちは(^^♪
      いえいえ、ホームページ、パンフなどを参考に自分なりにまとめてみました(*^^)v
      読んでくださってありがとうございます(^_-)-☆
      新幹線からも五重塔が見えるんですね!!
      存在感ありますからね~。

      東寺の記事、ありがとうございます。
      これから読んでみます(^_-)-☆

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    2. 東寺の記事、とても詳しくて勉強になりました!!
      (コメント欄が閉じてたので、こちらで返信を…)
      この記事を読んでから行きたかったです。。。
      それにしても…、朝4時起きで、6時の新幹線!!
      しかも、そんな時間の新幹線が満席というのも驚きです!(゚д゚)!

      ブログ友さんにもお会いできたとは、奇跡ですね(^.^)
      たくさんのお土産もいいですね。
      私も京漬物は大好き!!
      八つ橋は栗餡が好きです(*^^)v

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      1. (‘-’*)オハヨ♪ございます。
        過去記事読んでいただき有難うございます。お袋はやればできる体調だと思うのですがその気がなくて上げ膳据え膳をしなければならなくなったので、この頃のようなお出掛けは無理になりました(-_-;) 自分達が元気な間に楽しみたいのですが何時になったらそうなるのやらです。京漬物と八つ橋美味しいですね。

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      2. 大変面白い記事でしたよ!!

        お母様はきっとsaganhamaさんがいろいろやってくれるので、嬉しいでしょうね~。
        いつまでも長生きして欲しいですね。

        うちの祖母も凄く元気な人でしたが、3度の入院と手術でだいぶ悪くなり、会話もろくにできない感じでしたが、今は復活しました。でも、寝てることが多く、家事をしたことがなかったおじさんが全部やってますが、生きててくれるだけでいいって言ってます。

        京漬物、八つ橋は最高です(*^^)v

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